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イマイのコラム
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生保年金二重課税事件
2018/07/27
大学院の修士論文を書き始めました。論題は「長崎年金二重課税事件における相続税と所得税の二重課税について」です。

この長崎年金二重課税事件は非常に面白い事件です。夫を亡くした妻が、夫のかけてきた保険金を年金形式で受け取った際に、源泉所得税を徴収されました。所得税法の規定には、相続によって取得したものには所得税を課さない旨が記載されています。実際に、年金形式でなく一括で受け取る場合には所得税は課せられません。

しかしながら、年金形式で受け取った場合には所得税が課せられています。受け取り方式が違うだけなのに、所得税の課税方法が違っていたのです。長崎地裁では納税者が勝訴。福岡高裁では税務署が勝訴。最高裁で納税者が逆転勝訴。平成22年に最高裁判決が出たのですが、国はすぐさま最高裁判決に沿うように税の取り扱いを変更しました。それだけでなく過去にさかのぼって所得税の還付を行ったのです。

近年では納税者が勝訴することも増えてきていますが、租税訴訟において納税者が勝訴する確率は非常に低いものでした。そもそも、この裁判においては2万5600円の金額を争うものであったために、弁護士を付けず納税者が「本人訴訟」として税務署と闘った事例です。本人はもちろん、バックについた税理士の奮闘が「間違ごぅとは正さんといかんたい!」という書籍で読むことができます。第二審からは弁護士がつきましたが、弁護士も手弁当での参加…最終的には国を動かすこととなりました。

「相続により取得するものについては所得税は非課税となるはず。なんで源泉所得税が引かれているのか?」というひとりの税理士のちょっとした疑問から、それまでの課税実務においては「所得税と相続税は別個の法律であるから二重課税の問題は生じない」という論理で誰もが「そういう決まりだから」と納得していたものをとりあげました。

少額であるからということで諦めることなく、裁判という大きな舞台に臨んでいった税理士の信念と勇気が素晴らしいと思います。